歴史的仮名遣い② 「む→ん」「くわ→か」と連母音(あう→おう・えう→よう)の直し方
※ この記事は上の授業動画の内容をテキストで整理したものです。
この記事でわかること
- 「む」を「ん」に直すのはどんなときか。そのままにする「む」との見分け方
- 連母音(「かう→こう」「せう→しょう」「えう→よう」など)をローマ字で考えて直す方法と、「くわ→か」「ぐわ→が」の決まり
- 「けふ」が「きょう(今日)」になる二段階の直し方と、動詞の終わりの「〜ふ」を「〜う」で止める決まり
古文の字は、決まったルールで今の字に直す
古文の字は、昔の発音をもとにした書き方です。そのあと発音が変わったので、今の字(現代仮名遣い)で書くときは、決まったルールで直します。
この記事は、歴史的仮名遣いの 2 回目です。まず、前の回で学んだ「直す決まり」を確かめておきましょう。
- 1 文字目ではない「は・ひ・ふ・へ・ほ」は、「わ・い・う・え・お」にする(このあと、この決まりを「ハ行の決まり」と呼びます)
- 「ゐ」は「い」、「ゑ」は「え」にする
- 言葉の一部の「を」は「お」にする
- 「ぢ」は「じ」、「づ」は「ず」にする(ただし、今も「ぢ・づ」と書く言葉はそのまま)
- 助詞の「は・へ・を」は、そのまま
あやしい所があれば、このシリーズの前の回「歴史的仮名遣い①」に戻って確かめてください。
では、「けふ」という言葉を考えてみます。前の回の決まりで「ふ」を「う」にすると、「けう」になります。ところが、「けう」という言葉は聞いたことがありませんね。ここまで直しても、まだ何の言葉か分かりません。
この回では、この続きの直し方を学びます。
- 「む」を「ん」にする決まり
- 「くわ」を「か」にする決まり
- 「けう」のように、母音が 2 つ並んだ所を直す決まり
記事の後半の問3 で、「けふ」を最後まで直します。
言葉のあとにそえる「む」は「ん」にする
時代劇やまんがで、「いざ、参らん」というせりふを聞いたことはありませんか。「さあ、行こう」という意味です。古文では、これを「いざ、まゐらむ」と書きます。
- 「ゐ」は、前の回の決まりで「い」になります。
- 最後の「む」は、読むときも今の字で書くときも「ん」です。
だから、今の字では「いざ、まいらん」になります。
この「む」は、「まゐら」という言葉のあとにくっついて、「〜しよう」という意味をそえています。
決まり:言葉のあとにそえる「む」は「ん」にする
たとえば、こうなります。
- 見む(見よう)→ みん
- せむ(しよう)→ せん
「なむ」「けむ」のように、言葉のあとにつく 2 文字の形の「む」も同じ仲間なので、「ん」にします。
直さない「む」もある
では、「む」は全部「ん」にすればいいのかというと、そうではありません。次の「む」はそのままです。
- 語頭(1 文字目)の「む」:「むすめ」の「む」は 1 文字目なので、そのまま。
- 言葉そのものの一部の「む」:「すむ(住む)」「のむ(飲む)」は、今も使う動詞です。この「む」は言葉の一部なので、そのまま。
見分け方
迷ったら、こう考えます。
- 「む」まで入れた形が、今も使う 1 つの言葉になる → そのまま
- 「む」まで入れた形が、今の 1 つの言葉にならない → 「ん」にする
「すむ」は今もある言葉なので、そのままです。でも、「みむ」という言葉は今はありませんね。だから「みん」にします。
問1 どの「む」を直す?
「む」を直すか、そのままにするか、今の見分け方を使って考えてみましょう。答えを読む前に、少し自分で考えてみてください。
問1 次の語を現代仮名遣いに直し、ひらがなで書きなさい。変わらないものは、そのまま書きなさい。
(1)むかし(昔)
(2)ゆかむ(行こう)
(3)よむ(本をよむ)
(4)いはむ(言おう)
答え
(1)むかし (2)ゆかん (3)よむ (4)いわん
(1)む が語頭 → そのまま
(3)よむ=今も使う動詞 → そのまま
(2)ゆか+む(〜しよう)→ ん
(4)は → わ(前の回)、む → ん
【注意】「いはん」は は の直し忘れ
1 つずつ確かめます。
- (1)むかし:「む」が 1 文字目、つまり語頭なので、そのままです。
- (3)よむ:今も使う動詞「読む」です。「む」はその言葉の一部なので、そのまま。「よん」にはしません。「よん」と書いた人は、決まりをちゃんと使おうとしたのです。ただ、ここは言葉の一部の「む」でした。
- (2)ゆかむ:「ゆかむ」という言葉は、今はありません。「ゆか」のあとに、「〜しよう」という意味をそえる「む」がついています。だから「ん」にして「ゆかん」です。
- (4)いはむ:直す所が 2 か所あります。
- 前の回の決まりで、2 文字目の「は」を「わ」にする。
- そえる「む」を「ん」にする。
- だから「いわん」です。
(4)を「いはん」と書いた人は、「む」はしっかり直せています。ただ、「は」を直し忘れました。新しい決まりに気を取られると、これは起きやすいのです。「む」を見つけて直したあとも、ほかの字を最後まで確かめましょう。
「くわ」は「か」、「ぐわ」は「が」にする
「くわびん」という言葉があります。農具の鍬(くわ)の話ではありません。これは「花瓶(かびん)」です。
昔は、「く」と「わ」を続けたような音を 1 つの音として発音していて、その音を 2 字で「くわ」と書きました。今はその音を「か」と発音して、「か」と書きます。にごった「ぐわ」も同じです。
決まり:くわ → か ぐわ → が
- くわびん → かびん(花瓶)
- ぐわか → がか(画家)
注意:もとの字が「くわ」「ぐわ」の所だけ
この直し方を使うのは、もとの字が「くわ」「ぐわ」と書かれている所だけです。ハ行の決まりで「は」を「わ」にしてできた「くわ」には使いません。
- くはへて → くわえて(「かえて」にはしない)
連母音は、ローマ字で考える
では、はじめの「けう」に戻りましょう。前の回の決まりでここまで来たけれど、まだ何の言葉か分かりませんでした。「け」の母音と「う」が並んでいる所は、もう 1 回直す必要があるのです。
母音とローマ字
母音とは、「あ・い・う・え・お」の音のことです。ローマ字では a・i・u・e・o。「か」が k と a に分けられるように、ローマ字にすると、音を子音と母音に分けられます。
この記事では、小学校で最初に習うローマ字の表の書き方を使います。
- し=si ち=ti つ=tu ふ=hu
- しゅ=syu しょ=syo ちょ=tyo
shi・chi・tsu・fu で覚えている人もいると思いますが、この記事ではこの書き方にそろえます。
連母音とは
母音が 2 つ続く所を、連母音といいます。ただし、今の書き方に直すのは、前の母音が a・i・e のどれかで、後ろの母音が u の所だけです。
たとえば前の回で直した「おもい」は、o と i が並んでいますが、後ろが u ではないので、これ以上は直しません。
ローマ字で見ると、決まりは 1 つ
連母音は、仮名だけで見ると、変わり方がばらばらに見えます。仮名のまま覚えようとすると、ここがいちばんややこしい所です。そこで、ローマ字で並べてみます。矢印の前が昔の字、矢印の後ろが今の字です。
- かう(kau)→ こう(kou):変わったのは a が o になった所だけ。k も、後ろの u もそのまま。
- きう(kiu)→ きゅう(kyuu):前の母音の i が yu になった。
- めう(meu)→ みょう(myou):前の母音の e が yo になった。
ローマ字で見ると、どれも同じことが起きています。
決まり:連母音は、前の母音だけが変わる
a → o i → yu e → yo
子音と、後ろの u はそのまま
ローマ字を仮名に戻すときの注意
kyu や myo のように、子音のあとに y がつく音は、「き」「み」のようない段の字に、小さい「ゅ」「ょ」をつけて書きます。
- kyu → きゅ
- myo → みょ
答えを書くときは、「ゅ」「ょ」を小さく書きましょう。
子音の無い「えう」は?
では、子音の無い「えう」はどうなるでしょう。ローマ字では eu です。前の母音の e が yo に変わって、後ろの u はそのまま。すると you、仮名にすると「よう」です。
本当にそうなるか、確かめてみます。古文には「えうなし」という言葉があります。これは今の「ようなし」、役に立たないという意味の言葉です。ちゃんと決まりのとおりになっていますね。子音が無くても、同じ決まりで説明できます。
これで、はじめの「けう」も、この連母音の決まりで直せそうです。でもその前に、問2 で連母音の練習をしておきましょう。「けう」は、そのあとの問3 で最後まで直します。
問2 連母音と「くわ・ぐわ」を直す
迷ったら、ローマ字にして、前の母音だけを変えてみてください。
問2 次の語を現代仮名遣いに直し、ひらがなで書きなさい。
(1)やうやう
(2)うつくしう
(3)せうせう
(4)くわじ
(5)ぐわんじつ
答え
(1)ようよう (2)うつくしゅう (3)しょうしょう
(4)かじ (5)がんじつ
【注意】「ようやう」は 2 つ目の直し忘れ
【注意】「せょう」✕
seu → syou:s はそのまま → し+小さい ょ
- (1)やうやう:「やう」はローマ字で yau。a が o になって you、「よう」です。後ろの「やう」も同じなので、「ようよう」。「ようよう」は「だんだん」という意味です。
- 前だけ直して「ようやう」と書いた人もいると思います。1 つ目が直せたなら、決まりはもう使えています。同じ形がくり返されていたら、2 つ目も直しましょう。
- (2)うつくしう:終わりの「しう」は siu。i が yu になって syuu、「しゅう」です。答えは「うつくしゅう」。
- (3)せうせう:ここがいちばん大事です。「せう」は seu。e が yo になって syou。子音の s は変わりません。s に y がつく音なので、「し」に小さい「ょ」をつけて「しょう」。2 つとも直して「しょうしょう」です。
- (4)(5):「くわ」「ぐわ」は、2 字で 1 つの音でした。今は「か」「が」です。「くわじ」は「かじ」で、火事のこと。「ぐわんじつ」は「がんじつ」で、元日、1 月 1 日のことです。
「せょう」と書いてしまった人へ
(3)を「せょう」と書く人は、本当に多いです。「せ」はそのままで、後ろが「ょう」になる、と考えたのですね。e が yo になる所はつかめています。
ただ、ローマ字で見ると、se の e は yo に変わっているので、「せ」は残りません。同じさ行の「し」に、小さい「ょ」をつけます。仮名だけで考えると迷いやすいので、ローマ字にして母音だけを変えてみてください。
最後に、答えの「ゅ」「ょ」を小さく書けたか、見直しておきましょう。
二段階で直す語と、止める所
ここからは、2 つの決まりを続けて使う場合です。
「てふ」は二段階で「ちょう」
「てふ」という言葉は、連母音でしょうか。ローマ字にすると te と hu。後ろが u だけではなく hu なので、このままでは連母音の決まりは使えません。
そこで、順番に直します。
- ハ行の決まり:「ふ」を「う」にして「てう」。ここで初めて、e と u が並びました。teu です。
- 連母音の決まり:前の母音の e が yo になって tyou。ty は「ち」に小さい「ょ」なので、「ちょう」。
「てふてふ」は、今の「ちょうちょう」、虫の蝶なのです。もとの字には「ち」も「ょ」も無いのに、ローマ字にして母音を変えると、すっきり説明がつきます。
決まり:ハ行を直してから、連母音を直す(二段階)
2 回直すので、二段階と呼びます。1 回目で止めると、半分しか直していないことになります。
動詞の終わりの「〜ふ」は「〜う」で止める
ただし、二段階には止める所があります。
「うたふ」は、今の「歌う」です。ハ行の決まりで「うたう」になります。ここで連母音まで進めると、tau の a が o になって「うとう」になってしまいます。でも、「歌う」を「うとう」とは書きませんね。これはおかしな直し方です。
決まり:動詞の終わりの「〜ふ」は、「〜う」にしたら、そこで止める
今の書き方でも、動詞の終わりの「う」は「う」と書くからです。この止める決まりは、動詞だけのものです。名詞などには当てはめません。名詞の「てふ」は、最後まで進めて「ちょう」でしたね。
問3 どこまで進めて、どこで止める?
(1)は、はじめに出てきた「けふ」です。いよいよ最後まで直してみましょう。ほかの語は、どこまで進めて、どこで止めるかを考えます。
問3 次の語を現代仮名遣いに直し、ひらがなで書きなさい。
(1)けふ
(2)あふぎ(物の名)
(3)あふ(人にあふ)
(4)いふ(ものをいふ)
答え
(1)きょう (2)おうぎ (3)あう (4)いう
(1)けふ → けう → きょう(二段階)
(2)あふぎ=名詞 → 最後まで
(3)(4)動詞の終わりの「〜ふ」→「〜う」で止める
【注意】「けう」は直し忘れ、「ゆう」は直しすぎ
迷ったら、今の言葉でどう書くかを思い出す
- (1)けふ:二段階です。まずハ行の決まりで「けう」。次に連母音で、keu の e が yo になって kyou、「きょう」。はじめに何の言葉か分からなかった「けう」は、ここまで直すと「今日」になりました。
- 「けう」で止めた人は、1 段目はできています。あと半分、連母音まで進めましょう。
- (2)あふぎ と (3)あふ:どちらも「あふ」で始まりますが、答えが違います。
- 「あふぎ」は名詞の「扇」。ハ行の決まりで「あうぎ」にしたあと、au が ou になって「おうぎ」まで進みます。
- 「あふ」は動詞の「会う」で、「ふ」はその終わりの字です。動詞の終わりの「〜ふ」なので、「あう」にしたら止めます。今も「あう」と書くことで確かめられます。
- (4)いふ:これも動詞「言う」の終わりの「〜ふ」です。「いう」で止めます。
- i と u が並んでいるので、「ゆう」にしたくなりますね。連母音の決まりをしっかり覚えた人ほど、そうしたくなるはずです。でも、今の書き方でも「言う」は「いう」。「ゆう」は直しすぎです。
最後まで二段階で進むのは名詞など。動詞の終わりの「〜ふ」は、「〜う」で止めます。迷ったら、今の言葉でどう書くかを思い出してください。
問4 文を全部ひらがなで直す
前の回の決まりと、この記事の決まりを全部使います。漢字も、ひらがなにして書きます。少し長いので、自分のペースでじっくり考えてみてください。
問4 次の文を現代仮名遣いに直し、すべてひらがなで書きなさい。
けふは、やうやう暖かになりぬ。花を見にゆかむと友とちかふ。
答え
きょうは、ようようあたたかになりぬ。はなをみにゆかんとともとちかう。
けふ → きょう:二段階
は:助詞 → そのまま
やうやう → ようよう:連母音 2 か所
を:助詞 → そのまま
ゆかむ → ゆかん:そえる む
ちかふ → ちかう:動詞の終わりの「〜ふ」なので止める(ちこう ✕)
前から順に、使った決まりを確かめていきます。
- けふ → きょう:二段階。
- 「けふは」の は:助詞なので、そのまま。
- やうやう → ようよう:連母音を 2 か所直す。
- 「暖か」は今と同じ読みで「あたたか」。
- 「なりぬ」の「ぬ」は、どの決まりにも当たらないので、そのまま。
- 「花を」の を:助詞なので、そのまま。
- ゆかむ → ゆかん:言葉のあとにそえる「む」なので「ん」。
- ちかふ → ちかう:まずハ行の決まりで「ふ」を「う」にして「ちかう」。「ちかふ」は今の「誓う」という動詞で、直したのはその終わりの「〜ふ」なので、ここで止めます。今も「ちかう」と書くことで確かめられます。連母音まで進めて、kau の a を o にした「ちこう」は直しすぎです。
- 漢字の「花・見・友」も、今と同じ読みで「はな・み・とも」と書きます。
文の意味は、「今日は、だんだん暖かくなった。花を見に行こうと友と約束する(誓う)」です。前の回の決まりとこの記事の決まりで、古文の文をここまで今の字に直せるようになりました。
まとめ:この回の「直す決まり」
- 言葉のあとにそえる「む」→「ん」(語頭の「む」と、言葉の一部の「む」はそのまま)
- くわ → か、ぐわ → が
- 連母音(前が a・i・e、後ろが u)はローマ字で考える:前の母音だけ a→o、i→yu、e→yo
- 二段階:ハ行を直してから連母音を直す。ただし、動詞の終わりの「〜ふ」は「〜う」で止める
「けふ」がなぜ「きょう」になるのか。それを自分の言葉で説明できたら、この回の分は身についています。
このシリーズには、「基礎」「入試基礎」「入試応用」の 3 つの段があります。この回は、そのうち「基礎」の段の回です。このページのいちばん下から、プリント(問いと宿題)、練習問題のページ、宿題の解説動画へ進めます。
よくある質問
Q. 「む」を「ん」にするか、そのままにするか、どう見分ければいいですか?
A. 「む」まで入れた形が、今も使う 1 つの言葉になるかを考えます。「よむ(読む)」「すむ(住む)」のように今もある言葉なら、そのままです。「ゆかむ(行こう)」「みむ(見よう)」のように今は無い形で、言葉のあとにそえている「む」なら、「ん」にします。1 文字目(語頭)の「む」も、そのままです。
Q. 連母音は、なぜローマ字で考えるのですか?
A. 仮名だけで見ると、「かう→こう」「きう→きゅう」「めう→みょう」の変わり方がばらばらに見えるからです。ローマ字にすると、どれも「前の母音だけが a→o、i→yu、e→yo に変わる。子音と後ろの u はそのまま」という同じ決まりで説明できます。「せう」を「せょう」と書いてしまう間違いも、ローマ字(seu → syou)で考えると防げます。
Q. 「いふ」は i と u が並ぶのに、なぜ「ゆう」にしないのですか?
A. 「いふ」は動詞「言う」で、「ふ」はその終わりの字だからです。動詞の終わりの「〜ふ」は、「〜う」にしたらそこで止めます。今の書き方でも「言う」は「いう」と書きますね。迷ったら、今の言葉でどう書くかを思い出してください。
解答・解説つきの演習プリント(別ページ)
この単元の授業
- STEP 1-1
- STEP 1-2(この記事)
- STEP 2(準備中)


