歴史的仮名遣いの直し方① ハ行・ゐ・ゑ・を・ぢ・づと、直さない字の見分け方
※ この記事は上の授業動画の内容をテキストで整理したものです。
この記事でわかること
- 古文の字と読み方がずれているのはなぜか
- 直す字とその直し方(語頭以外のハ行、ゐ・ゑ、言葉の一部の「を」、ぢ・づ)
- 直さない字の見分け方(語頭のハ行/2 つの言葉が合わさった語の、後ろの言葉の頭のハ行/バ行/助詞の「は・へ・を」/今も「ぢ・づ」と書く語)
古文は、書いてある字と読み方がちがう
古文を読むと、「かほ」と書いてあるのに「かお」と読んだり、「うへ」と書いてあるのに「うえ」と読んだりします。書いてある字と読み方が合っていません。
この記事では、まずなぜこうなっているのかを知ります。そのうえで、古文の字を今の字に直せるようにします。大事なことは 2 つです。
- どの字を直すのか
- どの字は直さないのか
「直さない字」を知るのも、「直す字」を知るのと同じくらい大事です。記事の終わりには問題が 3 つあり、答えと解き方もそのまま載せています。自分の手で解いてみたい人は、ページのいちばん下から行けるプリントや練習問題のページで解けます。
字と読みがずれるわけ
古文で使われている書き方を 歴史的仮名遣い と言います。
この書き方は、平安時代の中ごろまでの書き方 がもとになっています。そのころは、だいたい発音どおりに書いていました。字と読み方が、ほぼ合っていたのです。
ところが、そのあと長い時間のうちに、発音のほうが変わっていきました。歴史的仮名遣いは、変わる前の発音に合わせた書き方です。だから、字と読み方がずれてしまいました。
今の私たちの書き方のもとは、昭和 21 年(1946 年)に決められた「現代かなづかい」 です。こちらは、今の発音に近い書き方になっています。
まとめると、古文の字は昔の発音に合わせて書かれている、ということです。だから、古文を読むときや今の字で書くときは、決まったルールで直せば いいのです。
この記事で学ぶ「直す決まり」は、次の 5 つです。ここから 1 つずつ説明していきます。
直す決まり
1. 語頭以外のハ行 → わ・い・う・え・お
2. ゐ → い ゑ → え
3. 言葉の一部の を → お
4. ぢ → じ づ → ず(今も ぢ・づ と書く語は除く)
5. 助詞の は・へ・を → そのまま
決まり 1:語頭以外のハ行は「わ・い・う・え・お」
次の 3 つの言葉で考えます。
| 昔の字 | 意味 | 今の字 |
|---|---|---|
| には | 庭 | にわ |
| かほ | 顔 | かお |
| はね | 羽 | はね |
3 つとも、「は」や「ほ」、つまり ハ行の字(は・ひ・ふ・へ・ほ)が入っています。でも、今の字で「わ」や「お」に変わっているものと、「は」のまま変わっていないものがあります。
同じハ行なのに、何がちがうのでしょうか。手がかりは、ハ行の字が言葉の何文字目にあるか です。
- 「には」の「は」は 2 文字目です。「かほ」の「ほ」も 2 文字目です。どちらも変わっています。
- 「はね」の「は」は 1 文字目で、変わっていません。
言葉の 1 文字目を 語頭(ごとう) と言います。
- 語頭のハ行 → そのまま
- 語頭以外のハ行 → わ・い・う・え・お に直す
なぜこうなるのでしょうか。昔から今までのあいだに発音が変わったのは、言葉の途中や終わり、つまり語頭以外にあるハ行の音でした。言葉の頭のハ行は、今もハ行のままです。
気をつけること:「ほ」は「お」にする
「ほ」は「お」に直します。「を」にはしません。
「ほ」の音は今は「お」なので、「を」と書いてしまいやすいところです。でも、今の書き方では、「を」の字を使うのは「本を」のような所だけです。ふつうの「お」の音は「お」と書きます。
これで決まりの 1 つ目ができました。「語頭以外のハ行は、わ・い・う・え・お」 です。
ハ行に見えても変えないもの
ハ行のように見えても、変えないものが 3 つあります。
① バ行の字(ば・び・ぶ・べ・ぼ)
点々(濁点)のついた「ば・び・ぶ・べ・ぼ」は、バ行の字です。ハ行ではないので、ハ行の決まりは当たりません。
たとえば「あはび」(魚介の鮑〔あわび〕)です。2 文字目の「は」は「わ」にしますが、3 文字目の「び」はそのままです。だから「あはび」は「あわび」になります。
② 2 つの言葉が合わさった語の、後ろの言葉の頭
「あさひ」は、「朝」と「日」が合わさった言葉です。「ひ」は 3 文字目ですが、「日」という言葉の頭です。だから語頭と同じに考えて、そのままにします。今も「あさい」とは言いませんね。
見分けるときは、意味で区切って みます。区切るのは、それぞれ 1 つの意味を持つ 2 つの言葉の間だけです。「朝」も「日」も、それだけで意味を持つ言葉なので、その間で区切れます。
でも、漢字のあとにつく送り仮名は区切りません。たとえば「迷ひ」の「ひ」、「数へ」の「へ」です。この「ひ」や「へ」は、それだけでは意味を持ちません。だから区切らずに、語頭以外のハ行として直します。「迷ひ」は「まよい」、「数へ」は「かぞえ」になります。
ここは、この記事で学ぶことの中でいちばんまぎらわしいところです。迷ったら、「それだけで意味がある言葉かな?」と確かめてみてください。
③ 文の中では、言葉ごとに区切ってから考える
たとえば「とりのはね」です。文の頭から数えると「は」は 4 文字目です。でも、「はね」という言葉の 1 文字目なので語頭です。そのままにします。
「語頭」は、文の頭ではなく、その言葉の頭 のことです。ここは覚えておいてください。
ここまでの 3 つを、図で見てみましょう。図の太い縦線が、言葉の区切りです。
決まり 2〜4:ゐ・ゑ・を・ぢ・づ
次は、ハ行のほかに直す字です。こちらはハ行よりかんたんです。
決まり 2:ゐ → い、ゑ → え
「ゐ」と「ゑ」は、今は使わない字です。「ゐ」は「い」、「ゑ」は「え」と読み、そう書きます。言葉のどこにあっても直します。
- まゐる → まいる
- すゑ(末)→ すえ
決まり 3:言葉の一部の を → お
- をか(丘)→ おか
- かをる(香る)→ かおる
この「を」は、「おか」「かおる」という言葉の一部です。言葉の一部の「を」は「お」に直します。
わざわざ「言葉の一部の」と書いたのには、わけがあります。それはこのあとの決まり 5 で説明します。
決まり 4:ぢ → じ、づ → ず
- かぢ(舵)→ かじ
- めづらし → めずらし
ただし、今の言葉でも「ぢ・づ」と書く語は、そのまま にします。たとえば「つづく」「ちぢむ」は、今もこう書きます。
決まり 5:助詞の「は・へ・を」はそのまま
「を」を「言葉の一部」のときだけ直すのは、言葉の一部ではない「を」があるからです。それが 助詞 です。
品詞の分類で習った助詞を思い出してください。ひとりでは使えず、ほかの言葉のあとについて、言葉と言葉の関係を表したり、意味をそえたりする言葉です。形は変わりません。
今の書き方で考えてみます。
| 今の書き方 | 読むときの音 |
|---|---|
| わたしは | わ |
| 学校へ | え |
| 本を | お |
読むときは「わ」「え」「お」です。でも書くときは、今でも「は」「へ」「を」と書きます。
つまり、今の書き方でも、助詞の「は・へ・を」はそのままにしています。だから、古文を今の字に直すときも、助詞の「は・へ・を」は直しません。
これで決まりが 5 つそろいました。
- 同じ「を」でも、言葉の一部なら「お」、助詞ならそのまま。
- 同じ「は」でも、語頭以外なら「わ」、助詞ならそのまま。
直す前に、それが何の字なのかを見る。ここが大事です。
問1:ゐ・ゑ・を・ぢ・づを直す
問1 次の語を現代仮名遣いに直し、ひらがなで書きなさい。
(1)ゐなか
(2)こゑ
(3)をとこ
(4)もみぢ
(5)よろづ
答えは、次のとおりです。
問1 答え
(1)ゐなか → いなか(田舎)
(2)こゑ → こえ(声)
(3)をとこ → おとこ(男)
(4)もみぢ → もみじ(紅葉)
(5)よろづ → よろず(すべてのこと)
どれも、1 字を 1 字に置きかえるだけです。上の「直す決まり」で、矢印の左の字を見つけたら、右の字にすればいいのです。
- 「ゐなか」は今の「田舎」、「こゑ」は「声」です。「ゐ」と「ゑ」は、どこにあっても「い」「え」にします。
- 「をとこ」は「男」です。この「を」は、「男」という言葉の一部です。だから「お」にします。このあとの問3 では、直さない「を」が出てきます。比べてみてください。
- 「もみぢ」は「紅葉」、「よろづ」は「すべてのこと」という意味です。「ぢ」「づ」は、今の書き方では「じ」「ず」です。
5 つとも合っていたら、置きかえる字はばっちりです。
問2:ハ行は「何文字目?」を確かめる
問2 次の語のうち、現代仮名遣いに直すと書き方が変わるものをすべて選び、直してひらがなで書きなさい。
かは はな おもひ ひと まへ にほひ かはづ
7 つの中には、変わらない語も入っています。答えは、次のとおりです。
問2 答え
ハ行は、まず「何文字目?」
「はな」「ひと」→ 語頭なので変わらない
かは → かわ
おもひ → おもい
まへ → まえ
にほひ → におい(2 か所)
かはづ → かわず(2 か所)
1 か所直しても終わりにしない
最後の字まで 1 字ずつ確かめる
ハ行を見つけたら、まず 「何文字目?」 と確かめます。
- 「はな」と「ひと」は、ハ行が 1 文字目、つまり語頭にあります。だから、そのままです。
- 「かは」「おもひ」「まへ」は、ハ行が語頭以外にあります。だから「かわ」「おもい」「まえ」です。
ここからが大事です。「にほひ」と「かはづ」は、直す所が 2 か所あります。
「にほひ」は、2 文字目の「ほ」と 3 文字目の「ひ」が、どちらも語頭以外のハ行です。だから「におい」です。
「におひ」で止めてしまうのが、いちばん多いまちがいです。「ほ」を「お」にできていれば、決まりはちゃんと使えています。もう 1 か所残っていた、というだけです。「かはづ」は、「は」をハ行の決まりで「わ」にします。そして「づ」は、問1 でやった決まりで「ず」にします。だから「かわず」です。
1 つ直して安心して、「かわづ」と書いてしまう人も多いです。
1 か所直したら終わり、ではありません。 最後の字まで指でなぞって、1 字ずつ確かめてください。
意味も見ておきます。「にほひ」は今の「におい」です。昔は、色の美しさにも使いました。「かはづ」は「かえる」のことです。
問3:文の中で、直す字と直さない字を見分ける
問3 次の文を現代仮名遣いに直し、すべてひらがなで書きなさい。
をさなき子は、かはのほとりへゆき、そこにゐて、ゆふべの空を見る。
今度は言葉ではなく文です。漢字もふくめて、すべてひらがなで書きます。漢字は、今と同じ読み方で読めます。答えは、次のとおりです。
問3 答え
おさなきこは、かわのほとりへゆき、そこにいて、ゆうべのそらをみる。
直す:を(言葉の一部)・は(語頭以外)・ゐ・ふ(語頭以外)
直さない:は(助詞)・ほ(語頭)・へ(助詞)・べ(バ行)・を(助詞)
意味:幼い子は、川のそばへ行き、そこにいて、夕方の空を見る。
文になると、直す字と直さない字がまざります。前から 1 つずつ見ていきます。
| 文の中の字 | 直す? | わけ |
|---|---|---|
| をさなき | を → お | 「をさなき」は「をさなし(幼い)」と同じ言葉で、形が少し変わったもの。この「を」はその言葉の一部 |
| 子は | そのまま | 助詞。今でも「わたしは」と書くのと同じ |
| かは | は → わ | 語頭以外のハ行 |
| ほとり | そのまま | 「ほとり」(川のそば)という 1 つの言葉の 1 文字目=語頭 |
| ほとりへ | そのまま | 「〜へ行く」の「へ」と同じ助詞 |
| ゐて | ゐ → い | 「ゐ」はどこにあっても「い」 |
| ゆふべ | ふ → う | 2 文字目=語頭以外のハ行 |
| ゆふべ | そのまま | バ行の字なので、ハ行の決まりは当たらない |
| 空を | そのまま | 助詞 |
最初の「を」は直して、最後の「を」は直しません。同じ字でも、言葉の一部か助詞かで決まります。 最後の「を」まで「お」にしていた人は、「を → お」をしっかり覚えていたということです。あとは、その字が何なのかを見るひと手間を足せば完ぺきです。
漢字の「子」「空」「見」は、今と同じ読みなので、「こ」「そら」「み」と書きます。
文の意味は、「幼い子は、川のそばへ行き、そこにいて、夕方の空を見る」です。
まとめ
- 古文の字は、昔の発音に合わせた書き方です。そのあと発音が変わったので、字と読みがずれています。だから、決まりで直します。
- 語頭以外のハ行 → わ・い・う・え・お(「ほ」は「お」。「を」にはしない)
- ゐ・ゑ・を・ぢ・づ → い・え・お・じ・ず(「を」は言葉の一部のとき)
- 変えないもの:語頭のハ行/2 つの言葉が合わさった語の、後ろの言葉の頭のハ行/バ行/助詞の「は・へ・を」/今も「ぢ・づ」と書く語
- 直すときは、最後の字まで 1 字ずつ確かめる。
次の回では、「む」を「ん」にする決まりや、「あう」を「おう」にする決まりなど、今回とは別の直し方の決まりを学びます。
よくある質問
Q. 「ほ」を直すとき、「お」と「を」のどちらにすればいいですか。
A. 「お」にします。今の書き方で「を」の字を使うのは、「本を」のような助詞の所だけです。ふつうの「お」の音は「お」と書きます。だから、「かほ」は「かお」、「にほひ」は「におい」になります。
Q. 「あさひ」の「ひ」は 3 文字目なのに、どうして直さないのですか。
A. 「あさひ」は「朝」と「日」が合わさった言葉で、「ひ」は「日」という言葉の頭だからです。語頭と同じに考えて、そのままにします。ただし、「迷ひ」の「ひ」のような送り仮名は、それだけでは意味を持たないので区切りません。語頭以外のハ行として「まよい」と直します。迷ったら、「それだけで意味がある言葉かな?」と確かめてください。
Q. 古文の「は」が、直すのか直さないのか分かりません。
A. まず、その「は」が何の字なのかを見ます。そのままにする「は」は、次の 3 つです。
- 言葉の 1 文字目(語頭)にある「は」(「はね」の「は」)
- 2 つの言葉が合わさった語の、後ろの言葉の頭にある「は」(意味で区切ったときに、後ろの言葉の 1 文字目になる「は」)
- 助詞の「は」(「子は」の「は」)
この 3 つのどれにも当たらない「は」、つまり言葉の途中や終わりにある「は」(「かは」の「は」)は、「わ」に直します。
解答・解説つきの演習プリント(別ページ)
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