中3社会|人権と憲法【Step 1b】
中3 社会|人権と憲法|Step 1b
この記事でわかること
- 人権は「国家に何を求めるか」の方向性で自由権・平等権・社会権・参政権・請求権の4分類に整理できる
- 自由権は精神・身体・経済活動の3種類に分かれ、「国家にやってもらう」社会権との混同が頻出ミスになる
- 参政権は国家を「動かす」権利、請求権は「正す」権利と2語で区別できる
※ この記事は上の授業動画の内容をテキストで整理したものです。
学習マップ
この単元の位置づけです。
『自由・平等・社会・参政・請求』——5つの人権、名前は覚えたけど、どれがどれだか頭の中でぐちゃっとなる、ってない?
整理の物差しは1本だけ。
『国家に何を求めるか』で分ける
5つのニュース場面で人権の違いを実感する
ある休日の朝刊・ニュースサイト。
5つの見出しが目にとまった。
- ①警察に理由なく連行された男性、国を訴え
- ②生活保護の支給額めぐり訴訟
- ③出身国を理由に就職を断られた女性
- ④18歳の若者、初めての投票
- ⑤SNSで自分の宗教を自由に発信したい
全部『人権』。でも国家に求めることがバラバラ
→ この物差しを今日学ぶ
①理由なき連行に対して国を訴える男性、②生活保護の支給額をめぐる訴訟、③出身国を理由に就職を断られた女性、④18歳の初投票、⑤SNSで宗教を自由に発信したい——この5つはすべて「人権」の話ですが、国家への要求の方向がまったく異なります。「やめてほしい」「支えてほしい」「平等に扱ってほしい」「政治に関わりたい」「誤りを正してほしい」という方向の違いが、人権分類の軸になります。
4つの方向で人権を分類する
【ルール】
人権は『国家に何を求めるか』で4つに分かれる
**基本的人権**は「国家に何を求めるか」で4方向に分類できます。①**自由権**:干渉をやめてほしい、②**平等権**:差別なく平等に扱ってほしい、③**社会権**:生活を支えてほしい、④**参政権・請求権**:国家を動かしたい・正したい。この方向をまず頭に置いてから各権利の中身を見ていくと、分類の迷いがなくなります。
平等権——「差別なく扱ってほしい」
【平等権】法の下の平等(憲法14条)
→ 国家に『差別なく扱って』と求める権利
- 人種・性別・社会的身分などによる差別を禁止
- 全員が法のもとで等しく扱われる
- (例)出身国で就職を断られた → 平等権の侵害
**平等権**の根拠は**憲法14条**(**法の下の平等**)です。人種・性別・社会的身分などを理由とする差別を禁止し、すべての人が法のもとで等しく扱われることを保障します。「出身国を理由に就職を断られた女性」はこの平等権が脅かされている場面です。
自由権——「国家の干渉をやめてほしい」
【自由権】国家からの干渉を防ぐ
→ 精神・身体・経済活動の3分類
**自由権**は「国家に干渉させない領域」を保障する権利で3つに分かれます。①**精神の自由**:思想・良心の自由、信教の自由、表現の自由、学問の自由(心の領域)。②**身体の自由**:正当な令状なしに逮捕されない、自白を強要されないなど(からだの領域)。③**経済活動の自由**:居住・移転の自由、職業選択の自由、財産権の保障(くらしの領域)。「SNSで宗教を発信したい」は精神の自由、「理由なく連行された」は身体の自由の事例です。
社会権——「国家に生活を支えてほしい」
【社会権】国家が制度をつくって保障する
(20世紀的人権)中心は生存権(憲法25条)
**社会権**の中心は**憲法25条**の**生存権**「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」です。これに**教育を受ける権利**(26条)、**勤労の権利**(27条)、**労働基本権**(28条・団結権・団体交渉権・団体行動権)が加わります。「憲法25条=生存権=社会権の中心」の3点はセットで覚えておきましょう。
参政権・請求権——「国家を動かす・正す」
【参政権】国家を『動かす』
【請求権】国家を『正す』
**参政権**は国家を「動かす」権利(選挙権・被選挙権・国民審査・国民投票)、**請求権**は国家の誤りを「正す」権利(裁判を受ける権利・国家賠償請求権・刑事補償請求権)です。「動かす=参政権、正す=請求権」の2語で区別できます。
自由権と社会権の混同に注意
❌ 自由権と社会権を混同しないで!
同じ場面でも、国家との関わり方で分類が違う
| 自由権(やめて) | 社会権(やって) |
|---|---|
| 学問の自由 (自由に勉強する) | 教育を受ける権利 (学校・教科書を保障) |
| 職業選択の自由 (仕事を選ぶ) | 労働基本権 (団結して交渉できる) |
同じテーマでも国家への方向が逆になると分類が変わります。「学ぶ」では、自由に研究する→**学問の自由**(自由権・精神)、国に教育制度を整えてもらう→**教育を受ける権利**(社会権)。「働く」では、職業を自由に選ぶ→**職業選択の自由**(自由権・経済)、労働組合で国の制度保護を求める→**労働基本権**(社会権)。テーマではなく「国家に何を求めているか」の方向で判断することが重要です。
確認クイズ①
問1: 次のうち、自由権の『精神の自由』にあてはまるものはどれですか。
- ア: 理由なく警察に逮捕されない
- イ: 自分の信じる宗教を自由に選べる
- ウ: 病気のときに生活保護を受けられる
- エ: 18歳になったら選挙で投票できる
ア:理由なく警察に逮捕されない イ:自分の信じる宗教を自由に選べる ウ:病気のときに生活保護を受けられる エ:18歳になったら選挙で投票できる
クイズ①の正解
正解: イ
『自分の信じる宗教を自由に選ぶ』=信教の自由=精神の自由
- ア: 自由権だが『身体の自由』
- イ: 精神の自由(信教の自由)⭕
- ウ: 社会権(生存権)
- エ: 参政権(選挙権)
確認クイズ②
問2: 憲法25条で『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』として保障されている権利を何というか。
- ア: 表現の自由
- イ: 法の下の平等
- ウ: 生存権
- エ: 選挙権
ア:表現の自由 イ:法の下の平等 ウ:生存権 エ:選挙権
クイズ②の正解
正解: ウ
憲法25条=生存権=社会権の中心
- ア: 自由権(精神の自由)
- イ: 平等権
- ウ: 社会権(生存権)⭕
- エ: 参政権
確認クイズ③
問3: 『人種・性別・社会的身分などによる差別を禁止し、すべての人が法のもとで等しく扱われる』権利を何というか。
- ア: 自由権
- イ: 平等権
- ウ: 社会権
- エ: 参政権
ア:自由権 イ:平等権 ウ:社会権 エ:参政権
クイズ③の正解
正解: イ
差別を禁止=法の下の平等=平等権
- ア: 国家からの干渉を防ぐ権利
- イ: 差別禁止=平等権⭕
- ウ: 国家にやってもらう権利
- エ: 政治に参加する権利
確認クイズ④
問4: 自由権のうち『身体の自由』にあてはまるものを次から1つ選びなさい。
- ア: 好きな学問を自由に研究できる
- イ: 自分のなりたい職業を自由に選べる
- ウ: 令状なしに逮捕されない
- エ: 学校で教育を受けられる
ア:好きな学問を自由に研究できる イ:なりたい職業を自由に選べる ウ:令状なしに逮捕されない エ:学校で教育を受けられる
クイズ④の正解
正解: ウ
『令状なしに逮捕されない』=身体の自由
- ア: 精神の自由(学問の自由)
- イ: 経済活動の自由(職業選択)
- ウ: 身体の自由⭕
- エ: 社会権(教育を受ける権利)
確認クイズ⑤
問5: 労働組合を作って雇い主と対等に交渉したり、ストライキを行ったりできる権利は、どの権利に分類されるか。
- ア: 自由権
- イ: 平等権
- ウ: 社会権
- エ: 参政権
ア:自由権 イ:平等権 ウ:社会権 エ:参政権
クイズ⑤の正解
正解: ウ
労働基本権=社会権!
(『働く自由』=自由権とは別物)
- ア: 職業選択の自由は自由権だが、これは違う
- イ: 差別禁止の話ではない
- ウ: 労働基本権は社会権⭕
- エ: 政治参加ではない
確認クイズ⑥
問6: 国の誤りや権利侵害を裁判で正してもらうための『裁判を受ける権利』『国家賠償請求権』をまとめて何というか。
- ア: 自由権
- イ: 平等権
- ウ: 参政権
- エ: 請求権
ア:自由権 イ:平等権 ウ:参政権 エ:請求権
クイズ⑥の正解
正解: エ
国家の誤りを『正してもらう』=請求権
- ア: 国家の干渉を防ぐ権利
- イ: 差別禁止
- ウ: 国家を『動かす』権利
- エ: 国家を『正す』権利⭕
まとめ:4方向で人権を整理する
【今日のまとめ】
人権は『国家に何を求めるか』で4分類
- 自由権 = やめて(介入しないで)
- 平等権 = 差別なく扱って
- 社会権 = やって(生活を支えて)
- 参政権・請求権 = 動かす/正す
自己点検: 4つの軸を自分の言葉で言えたら今日はOK
自由権は「やめて(干渉しないで)」、平等権は「差別なく扱って」、社会権は「やって(支えて)」、参政権は「動かす」、請求権は「正す」。この方向性を自分の言葉で言えるようになれば、どんな問題でも分類を迷わず答えられます。次の単元の記事では、公共の福祉・新しい人権・国民の三大義務を扱います。
よくある質問
自由権と社会権はどう区別すればよいですか?
「国家に何を求めているか」の方向で判断します。「国家に干渉させない・やめてほしい」なら自由権、「国家に積極的に動いてもらいたい・制度を整えてほしい」なら社会権です。同じ「学ぶ」「働く」テーマでも方向が逆になれば分類が変わります。
参政権と請求権はどう違いますか?
参政権は国家を「動かす」権利(選挙権・被選挙権など)、請求権は国家の誤りを「正してもらう」権利(裁判を受ける権利・国家賠償請求権など)です。「動かす=参政権、正す=請求権」の2語で覚えると混同を防げます。
社会権が「20世紀的人権」と呼ばれる理由は何ですか?
かつての人権は「国家から干渉されない自由権」が中心でしたが、19〜20世紀に「自由だけでは生活困窮者を救えない」という考えが広まり、国家に積極的な支援を求める社会権が登場したためです。
解答・解説つきの演習プリント(別ページ)
この単元の授業
- Step 1a(準備中)
- Step 1b(この記事)
