歴史的仮名遣い③ 入試の基礎:直し忘れ・直しすぎを防ぐ4つの手順
※ この記事は上の授業動画の内容をテキストで整理したものです。
この記事でわかること
- 入試で点を落とす主な2つの形「直し忘れ」と「直しすぎ」
- 本文の線部を迷わずに直すための、答える4つの手順
- 「線部を直す」「線の無い文から抜き出す」「変わらないものを選ぶ」の3つの問いの解き方
この回で学ぶこと
歴史的仮名遣いの3回目です。1回目と2回目では、昔の字を今の字に直すルールを学びました。
- ①の回:ゐ・ゑ と ハ行のルール
- ②の回:む→ん・くわ→か・連母音のルール
この回では、そのルールを入試の形の問いで使います。入試では、長い本文の中に線が引いてあったり、線の引いていない文から自分で探したりします。この記事を読み終えるころには、どの形の問いでも、同じ手順で落ち着いて答えられるようになります。
ルールを初めて見る人は、先に①と②の回を読んでからこの回に来ると分かりやすいです。いつ戻ってきても大丈夫です。この記事の中でも、使うルールは短くふり返ります。
点を落とす主な2つの形
「けふ」は「きょう」。1語ずつ出されれば、もう直せる人も多いと思います。でも、長い本文の中に線が引いてあると、「どこから手をつければいいの?」と迷いがちです。
入試で点を落とす形はいくつかあります。この回で主に防ぐのは、そのうちの2つです。
- 直し忘れ:直す所を残してしまう
- 直しすぎ:直さない所まで直してしまう
直し忘れの例は「にほひ」です。 「ほ」を「お」にしたところでほっとして、「におひ」と書いてしまう。これは本当によくある失敗です。最後の「ひ」も直して、「におい」が正しい形です。
直しすぎの例は「まひる」です。 「ひ」が2文字目にあるので、「い」にしたくなりますよね。ルールをちゃんと覚えているからこそ、そう考えるのです。でも「まひる」は、「ま(真)」と「ひる(昼)」が合わさった言葉です。「ひ」は「ひる」という言葉の頭なので、直しません。「まいる」は直しすぎです。
直さなくていい所まで直してしまっても、点は落ちます。両方を防ぐには、毎回同じ順番で見ていけばよいのです。その順番を、次で4つの手順にまとめます。
答える4つの手順
答える4つの手順
- 漢字を読んで、ひらがなにする
- 1字の置きかえ:語頭以外のハ行/ゐ・ゑ・を/ぢ・づ
- まとまり:む→ん/くわ・ぐわ/連母音(二段階/動詞の終わりの「〜ふ」は「〜う」で止める)
- 見直し:語頭・合わさった言葉の後ろの頭・助詞・バ行の字(ば・び・ぶ・べ・ぼ)・動詞の止め
例文で、手順を1つずつ試してみましょう。
例 てふを見て、うたふ。
チョウを見て歌う、という意味です。
手順に入る前に:言葉ごとに区切る
まず、言葉ごとに区切ります。
区切る てふ|を|見て|うたふ
先に区切っておくと、どの字が言葉の1文字目なのか、どれが助詞なのかが見えてきます。だから、このあとの置きかえで迷わずにすみます。
① 漢字を読んで、ひらがなにする
① てふ|を|みて|うたふ
「見」は「み」です。今と同じ読みの漢字は、そのままひらがなにします。入試で「すべてひらがなで」と書いてあったら、漢字も残しません。
② 1字の置きかえ
② てう|を|みて|うたう
ルールをふり返っておきます。
- 1文字目以外の「は・ひ・ふ・へ・ほ」は「わ・い・う・え・お」にします。「ほ」は「お」で、「を」ではありません。
- 「ゐ」は「い」、「ゑ」は「え」にします。
- 言葉の一部の「を」は「お」にします。
- 「ぢ・づ」は「じ・ず」にします。
例文では、「てふ」と「うたふ」の「ふ」を「う」にします。
③ まとまりで直す所
③ ちょう|を|みて|うたう
- 言葉のあとにそえる「む」は「ん」にします。
- 「くわ・ぐわ」は「か・が」にします。
- 連母音は、ローマ字にして、前の母音を a は o、i は yu、e は yo に変えます。
区切ってあるので、言葉ごとに見ていけます。
「てう」は虫の名前です。teu の e が yo になって tyou、「ちょう」まで直します。ハ行を直して、さらに連母音も直す、二段階です。この二段階のところが、この単元でいちばんややこしい所です。1回直しただけで終わった気になりやすいので、丁寧に見ましょう。
「うたう」は、動詞の終わりの「ふ」を「う」にした所です。今も「うたう」と書くので、ここで止めます。
区切らずに一続きで見ると、どこまで直して、どこで止めるのかが分からなくなってしまいます。
④ 見直し
④ 「を」は助詞なので、そのまま
直さなくていい所まで直していないかを確かめます。例文の「を」は助詞なので、そのままです。
→ ちょうをみて、うたう。
【決まり】1つの線部に言葉が2つ以上あるときは、まず言葉ごとに区切ってから、①から直す
見直しで見る所:直さない所5つ
手順④の見直しで確かめるのは、直さない所です。全部で5つあります。
- 語頭のハ行 「はな」の「は」は1文字目なので、そのままです。文の中でも、言葉の1文字目は語頭です。「川のほとり」の「ほ」は「ほとり」という言葉の頭なので、そのままです。
- 合わさった言葉の後ろの頭 「まひる(ま+ひる)」のように、2つの言葉が合わさった語の、後ろの言葉の頭です。迷ったら、意味で区切ってみてください。
- 助詞の「は・へ・を」 今も「わたしは」「学校へ」「本を」と書きますよね。それと同じで、そのままです。
- バ行の字(ば・び・ぶ・べ・ぼ) 点々のついたバ行の字で、ハ行ではありません。見た目は似ていても、ハ行のルールは当たりません。
- 動詞の終わりの「〜ふ」 「〜う」にしたら、そこで止めます。
入試の問いの3つの形
入試の問いは、主に次の3つの形で出ます。
- 線部を直す
- 線の無い文から、変わる所を抜き出す
- 変わらないものを選ぶ
最後の「変わらないものを選ぶ」問いは、まさに直しすぎをしないかを見ている問いです。
ここからは、1つの本文を使って、この3つの形を全部解いていきます。
今日の本文
むかし、ある山里の(ア)をがはのそばに、子ありけり。ある朝、庭の花のしをれたるを見て、母に①問ひて(イ)いはく、
「この花(ウ)は、なに(エ)ゆゑ、かくしをれたるや。」
母、②答へて③言ふやう、
「水の足らぬゆゑなり。水をやれば、(オ)ほかの花のごとく、④けふもにほふべし。されど、風の⑤吹かむ日は、よく見まもれ。」
子、これを聞きて、その花をあはれと思ひて、日ごとに水をやりけり。
やうやう日も暮れぬれば、子、ゆふひの光を山のはに見て、家に入りけり。
問いに入る前に、まずは自分のペースで、本文を目で一度読んでみてください。
あらすじ:小川のそばに住む子が、しおれた花を見て、なぜしおれたのかを母にたずねます。母は、水が足りないからだと教えます。子は、毎日花に水をやりました。
本文には、カタカナ(ア〜オ)の青い線と、数字(①〜⑤)の赤い線があります。最後の文には線がありません。また、「山のは」の横には「(山の端)」という注がついています。この注は問4で使うので、覚えておいてください。
問1 変わらないものを選ぶ
問1
線部ア〜オのうち、現代仮名遣いに直しても書き方が変わらないものをすべて選び、記号で答えなさい。
答え ウ・オ
ア をがは → おがわ(を+がは)
イ いはく → いわく
ウ 花は の「は」:助詞 そのまま
エ ゆゑ → ゆえ
オ ほか:「ほ」が語頭 そのまま
【注意】
ハ行を見ただけで「直す」と決めない
位置と、助詞かどうかを確かめる
図の赤丸は直す字、青い四角は直さない字です。1つずつ理由を確かめていきましょう。
- ア「をがは」:「を(小)」と「がは(川)」が合わさった言葉、つまり小川です。「を」は言葉の一部なので「お」にします。後ろの言葉「がは」の頭は「が」です。だから「は」は語頭ではなく、「わ」にします。「おがわ」に変わります。
- イ「いはく」:2文字目のハ行なので「わ」にします。「いわく」に変わります。
- ウ「花は」の「は」:助詞です。読むときは「わ」ですが、今も「わたしは」と書くのと同じで、書き方は変わりません。
- エ「ゆゑ」:「ゑ」を「え」にして「ゆえ」。変わります。
- オ「ほか」:「ほ」が1文字目、つまり語頭です。変わりません。
ウやオを選ばなかった人は、ハ行を見て「直すやつだ」と考えたのではないでしょうか。ハ行にすぐ気づけるのは、ルールが身についている証拠です。ただ、ここではもう一つ、位置を見る必要がありました。
変わらないものを選ぶ問いは、直しすぎを見る問いです。ハ行を見ただけで「直す」と決めずに、手順④の見直しで、位置と、助詞かどうかを確かめてください。
問2 漢字を含む線部を、すべてひらがなで
問2
線部①・②・⑤を現代仮名遣いに直し、すべてひらがなで書きなさい。
答え ①といて ②こたえて ⑤ふかん
① 問ひて → とひて → といて
② 答へて → こたへて → こたえて
⑤ 吹かむ → ふかむ → ふかん
【注意】
「すべてひらがなで」のときは、漢字を残さない
✕ 問いて ✕ 答えて
手順①から始めます。まず漢字を読みます。「問」は「と」、「答」は「こた」、「吹」は「ふ」です。そのあとで、ひらがなの部分を直します。
- ①「とひて」:2文字目の「ひ」を「い」にして「といて」。
- ②「こたへて」:この「へ」は、「学校へ」のような助詞ではありません。「答へ」という言葉の一部です。だから直して、「こたえて」です。
- ⑤「ふかむ」:この「む」は、「吹く」に「〜ような」という意味をそえる「む」です。だから「ん」にして、「ふかん」。
「問いて」「答えて」と書いた人は、直し方そのものは合っています。ただ一つ、漢字が残っています。「すべてひらがなで」と書いてあったら、漢字も全部ひらがなにします。入試では、ここで点がもらえないことがあります。せっかく直せているのに、もったいないですよね。
意味は、①が「たずねて」、②が「答えて」、⑤は「風が吹くような日は」です。
問3 1つの線部に言葉が2つ以上あるとき
問3
線部③・④を現代仮名遣いに直し、すべてひらがなで書きなさい。
答え ③いうよう ④きょうもにおう
③ 言ふ|やう
いふ → いう(動詞の終わりの「〜ふ」を「〜う」にした所で止める)
やう → よう(yau → you)
④ けふ|も|にほふ
けふ → けう → きょう(二段階)
にほふ → におう(動詞の終わりの「〜ふ」を「〜う」にした所で止める)
【注意】
ゆうよう ✕ 直しすぎ
いうやう ✕ 直し忘れ
どちらの線部にも、言葉が2つ以上入っています。手順に入る前に、まず言葉ごとに区切ってから直します。
③「言ふやう」=「言ふ|やう」
- 「言ふ」は、漢字を読んで「いふ」。「ふ」を「う」にして「いう」です。今もある動詞「言う」の終わりなので、ここで止めます。
- 「やう」は yau。a が o になって you、「よう」です。
合わせて「いうよう」です。
「ゆうよう」と書いた人は、「いう」も連母音かな、と考えたのでしょう。母音が並んでいることに気づけたのは、いい目のつけ所です。ただ、ここは動詞の終わりなので、止める所でした。これは直しすぎです。「いうやう」と書いた人は、後ろの「やう」の直し忘れです。
④「けふもにほふ」=「けふ|も|にほふ」
- 「けふ」は、ハ行を直して「けう」、それから keu が kyou になって「きょう」。例文の「てふ」と同じ、二段階です。
- 「も」は、そのままです。
- 「にほふ」は動詞です。「ほ」を「お」、「ふ」を「う」にして「におう」。動詞の終わりなので、ここで止めます。
合わせて「きょうもにおう」です。
区切らずに一続きで見ると、どこまで直して、どこで止めるのかが分からなくなります。区切るひと手間が効いてくるのは、まさにこういう所です。
意味は、③が「言うことには」、④が「今日も美しく咲く」です。
問4 線の無い文から抜き出す
問4
本文の最後の文のひらがなの部分から、現代仮名遣いに直すと書き方が変わる部分をすべて抜き出し、直してひらがなで書きなさい。
今度は線がありません。自分で全部見つける問いです。少し手ごわく感じるかもしれませんが、使う手順は同じです。
答え やうやう → ようよう
ゆふひ → ゆうひ
直さない所
暮れぬれば の「ば」:バ行の字(ハ行ではない)
光を の「を」:助詞
山のは の「は」:「端」の頭(語頭)
ゆふひ の「ひ」:「日」の頭(ゆふ+ひ)
【注意】
ようやう ✕ 直し忘れ
ゆうい ✕ 直しすぎ
山のわ ✕ 直しすぎ
線の無い問いでは、直し忘れと直しすぎの両方が起こりやすくなります。図の赤丸が直す所、青い四角が直さない所です。
直す所
- 「やうやう」:yau が you で「よう」。2つとも直して「ようよう」です。「ようやう」と書いた人は、1つ目で安心してしまった、2つ目の直し忘れです。
- 「ゆふひ」:「ゆふ(夕)」と「ひ(日)」が合わさった言葉です。直すのは「ふ」を「う」にする所だけ。後ろの「ひ」は「日」という言葉の頭なので、そのままです。「ゆうい」は直しすぎです。
直さない所
- 「暮れぬれば」の「ば」:バ行の字で、ハ行ではありません。ハ行のルールは当たらないので、そのままです。
- 「光を」の「を」:助詞なので、そのままです。
- 「山のは」の「は」:注の「山の端」を見ると、「端」という言葉の頭だと分かります。本文のところで覚えておいた注が、ここで役に立ちます。語頭なので、そのままです。「山のわ」は直しすぎです。
抜き出したら、手順④の見直しをします。語頭、合わさった言葉の後ろの頭、助詞、バ行の字を直していないか。この1回の確かめで、直しすぎを防げます。
意味は、「だんだん日も暮れてきたので、子は夕日の光を、山と空の境目に見て、家に入った」です。
まとめ
【決まり】
- 主に防ぐ失点は、直し忘れと直しすぎ
- 4つの手順で、毎回同じ順に見る
- 直したら、直しすぎていないか見直す
線部や文を見たら、まず言葉ごとに区切ります。それから、①漢字を読んでひらがなにする、②1字の置きかえ、③まとまりを直す、④見直し、の順に進みます。
長い本文でも、線が無くても、変わらないものを選ぶ問いでも、やることは同じです。直したら、直しすぎていないか見直す。この1回の見直しが、点を守ってくれます。
ページの下のプリントには、今日と同じ形の本文の問いが宿題として載っています。手順を1つずつたどって解いてみてください。迷ったら、いつでもこの記事に戻ってきて大丈夫です。
よくある質問
Q. 「まひる」や「ゆふひ」のように、2つの言葉が合わさっているかどうかは、どうやって見分ければいいですか。
A. 迷ったら、意味で区切ってみてください。「まひる」は「ま(真)+ひる(昼)」、「ゆふひ」は「ゆふ(夕)+ひ(日)」と区切れます。後ろの言葉の頭(「ひる」の「ひ」、「日」の「ひ」)は語頭と同じなので、直しません。なお、本文に「(山の端)」のような注があるときは、言葉の切れ目を知る手がかりになります。「山のは」は合わさった言葉ではありません。注を見ると、「は」が「端」という言葉の頭(語頭)だと分かります。
Q. 「言ふ」は「いう」なのに、なぜ連母音で「ゆう」にしないのですか。
A. 「言ふ」は動詞で、「ふ」は動詞の終わりの字だからです。動詞の終わりの「〜ふ」は、「〜う」にした所で止めます。今も「言う」と書きますよね。「うたふ→うたう」「にほふ→におう」も同じです。一方、「てふ」や「けふ」は動詞ではないので、「てう→ちょう」「けう→きょう」と二段階で直します。
Q. この記事の問4のような抜き出す問いでは、どこからどこまで抜き出せばいいですか。
A. この記事の問4と、ページの下のプリントの問いでは、直す字の周りだけでも、言葉ごとでも、前後を含めても、点は変わりません。大事なのは次の2つです。直す所(「やうやう」の2つの「やう」と、「ゆふひ」の「ふ」)を全部抜き出して正しく直していること。そして、抜き出した中に直しすぎが無いことです。前後の漢字も含めて抜き出したときは、その漢字もひらがなで書きます(「やうやう日も」なら「ようようひも」)。本物の入試やほかのテストでは、抜き出す範囲が問いで決められていることもあります。そのときは、問いの指示に従ってください。
解答・解説つきの演習プリント(別ページ)
この単元の授業
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