一次方程式の文章題で式が作れないときに考える3つのこと(入試応用)
※ この記事は上の授業動画の内容をテキストで整理したものです。
この記事でわかること
- 文章題で「何を x にするか」の選び方。候補を 2 つ考えて、間違えにくい方を選ぶ
- 長いすの問題のようにこみ入った場面を、図にして 1 種類ずつ数える方法
- 食塩水を混ぜる問題で、混ぜる前と後で「変わらない量」を見つけて式を作る方法
この記事を読む前に
この記事は、一次方程式の「入試の応用」の回です。次のことはもう分かっている、という前提で進めます。
- 方程式を解くこと
- 移項
- 分数や小数のある方程式
- 文章題の解き方
あやしいところがあれば、先に基礎の回(1a〜1e)と、入試の基礎の回(2a・2b)を見てから読んでください。いつ戻っても大丈夫です。
式が作れないのは、計算の力が足りないからではない
入試で初めて見る文章題が出ると、方程式を解く力はあるのに、式が作れなくて止まってしまうことがあります。多くの場合、原因は計算の力ではありません。式をどう組み立てるかを決められないことのほうが多いのです。
そこでこの記事では、組み立て方の決め方を次の 3 つにしぼります。
- 何を x にするか:候補を 2 つ考えて選ぶ
- こみ入った場面:図にして、1 種類ずつ数える
- 変わらない量に目をつけて、式を作る
1 問ずつ練習していきます。読み終わったときに、初めての問題でも「まずこれを考えよう」と思えるようになるのが目標です。
判断 1:何を x にするか
文章題でまず迷うのは、何を x にするかです。ふつうは、聞かれている物を x にします。でも、それがいつもいちばん楽とは限りません。
入試の基礎の回で解いた、次の問題で考えてみましょう。
1800 m の道のりを、途中まで分速 60 m で歩き、残りを分速 150 m で走ると、合わせて 21 分かかった。歩いた道のりは何 m か。
聞かれている「歩いた道のり」を x m にした場合
時間=道のり÷速さ なので、式はこうなります。
x/60+(1800−x)/150=21
分数の式になりました。
「歩いた時間」を t 分にした場合
道のり=速さ×時間 なので、式はこうなります。
60t+150(21−t)=1800
こちらには分数が出てきません。そのかわり、t を出したあとで、道のりに直す手間が 1 つ増えます。
どちらの式も正しく、答えも同じです。ですから、こう決めておきましょう。
【決まり】x の候補を 2 つ考える
迷ったら聞かれた物、分数だらけならほかの量
迷ったら、聞かれた物を x にします。式が分数だらけになりそうなら、時間など、ほかの量を x にすることも考えてみます。
問1:家から学校までの道のり
問1
A さんが家から学校へ行く。同じ時刻に家を出たとして、
分速 60 m で歩くと、始業時刻の 5 分後に着く
分速 90 m で走ると、始業時刻の 3 分前に着く
家から学校までの道のりを求めなさい。
x にする量の候補を 2 つ考えてから、どちらかで式を作ってみてください。時間の関係で迷ったら、時間を横線にした図をかくと、取り違えにくくなります。
まず、時間の関係を図で見る
時間の横線に、「家を出る」時刻と「始業時刻」をとります。走ると始業の 3 分前に着き、歩くと始業の 5 分後に着きます。
2 つの到着の間は、始業時刻をはさんで 3 分と 5 分あります。だから、到着の差は 5+3=8 分 です。
ここで、5−3=2 分とした人もいるかもしれません。「5 分」と「3 分」の 2 つの数が並んでいると、差をとりたくなりますよね。その考え方自体は自然です。ただ、片方は始業より前で、もう片方は始業より後です。図で見ると、2 つの時間は始業時刻から反対の向きにのびています。だから、たし算になります。この問題でいちばんつまずきやすいのは、ここです。
答え 1440 m
【注意】時間の差は 5−3=2 分ではない
始業時刻をはさむので 5+3=8 分
やり方 1:道のりを x m
歩く時間 x/60 分、走る時間 x/90 分
x/60−x/90=8
3x−2x=1440
x=1440
やり方 2:家を出てから始業までを t 分
歩く (t+5) 分、走る (t−3) 分
60(t+5)=90(t−3)
60t+300=90t−270
570=30t
t=19
道のり 60×24=1440
確かめ
歩く 1440÷60=24 分(始業の 5 分後)
走る 1440÷90=16 分(始業の 3 分前)
やり方 1:聞かれた道のりを x m にする
歩くとかかる時間は x/60 分、走ると x/90 分です。歩くほうが 8 分多くかかるので、
x/60−x/90=8
60 と 90 の最小公倍数 180 を両辺にかけると 3x−2x=1440 になり、x=1440 です。
やり方 2:家を出てから始業時刻までの時間を t 分にする
歩くと始業の 5 分後に着くので、かかる時間は (t+5) 分です。走ると 3 分前に着くので (t−3) 分です。どちらで行っても道のりは同じなので、
60(t+5)=90(t−3)
かっこをはずすと 60t+300=90t−270 です。移項して 570=30t、t=19 になります。
ただし、ここで終わりではありません。 聞かれているのは道のりでした。歩くと 19+5=24 分かかるので、道のりは 60×24=1440 m です。
2 つのやり方を比べる
- やり方 1 は、出てきた x がそのまま答えになる
- やり方 2 は、分数が出てこない
どちらも正しいので、自分が間違えにくい方を選べば大丈夫です。やり方 2 で t=19 を答えにしてしまった人も、式はちゃんと作れています。最後に「聞かれた物は何か」を見直すくせをつけましょう。
確かめ
1440 m を歩くと 24 分、走ると 16 分かかります。始業は家を出てから 19 分後なので、24 分は始業の 5 分後、16 分は始業の 3 分前です。文章に合っています。
判断 2:こみ入った場面は図にして数える
長いすや部屋割りの問題は、文章が長くなると、どこまでが何人なのかが分からなくなりやすい問題です。
まず、使う考え方を思い出しましょう。
過不足の問題
同じ量を 2 通りに表す
余る → 配った分にたす
足りない → 要る分からひく
同じ量を 2 通りに表して、等しいとおきます。
今回は、もう 1 つ注意がいります。全部の長いすに同じ人数が座っているとは限らないということです。
小さな例で見てみます。
長いす 5 脚に 4 人ずつ座り、最後の 1 脚だけ 2 人だった。
このとき、人数は 5×4=20 人ではありません。図にかいてみましょう。
- 4 人座っている長いすは 4 脚 → 4×4
- 2 人座っている長いすは 1 脚 → 2
合わせて 4×4+2=18 人です。
【決まり】長いすを図にかいて、座っている人数ごとに分けて数える
これを問 2 で使います。
問2:長いすの数と生徒の数
問2
生徒が長いすに座る。
1 脚に 4 人ずつ座ると、8 人が座れない。
1 脚に 5 人ずつ座ると、最後の 1 脚には 3 人だけが座り、
さらにだれも座らない長いすが 2 脚できる。
長いすの数と生徒の数を求めなさい。
長いすの数を x 脚として、5 人ずつ座る場面を図にかいてみてください。何人座っている長いすが何脚あるかを、分けて数えるのがポイントです。
4 人ずつ座るとき
x 脚の長いすに 4x 人が座れて、8 人が座れません。だから生徒は 4x+8 人 です。
5 人ずつ座るとき
図にすると、長いすは 3 種類に分かれます。
- 5 人座っている長いす
- 3 人だけの長いす(1 脚)
- だれも座っていない長いす(2 脚)
5 人座っている長いすは、全部の x 脚から、3 人の長いす 1 脚と空の長いす 2 脚をのぞいた x−3 脚 です。だから生徒は、5(x−3) に 3 人をたして、5(x−3)+3 人 になります。
式を作って解く
生徒の数は同じなので、
4x+8=5(x−3)+3
右辺を計算すると 4x+8=5x−12 です。移項して 8+12=5x−4x、x=20 になります。生徒は 4×20+8=88 人です。
答え 長いす 20 脚、生徒 88 人
長いすを x 脚
4 人ずつ → 生徒 4x+8 人
5 人ずつ → 5 人の長いす x−3 脚
生徒 5(x−3)+3 人
4x+8=5(x−3)+3
4x+8=5x−12
x=20
生徒 4×20+8=88
【注意】
5(x−2)+3 → 3 人の長いすを 2 回数えている
5(x−2) → 3 人の長いすも 5 人で数えている
確かめ
5×17+3=88、17+1+2=20 脚
多い間違いは 2 つ
この問題は、引っかかる人がとても多い問題です。
- 5(x−2)+3 とする間違い:空の長いす 2 脚だけをのぞいています。空の長いすをのぞこうとしたところは合っています。でもこれだと、3 人の長いすを「5 人の長いす」にも入れてしまい、2 回数えることになります。
- 5(x−2) とする間違い:3 人の長いすも、5 人座っているものとして数えています。
どちらも、長いすを 1 種類ずつ分けずに数えたことが原因です。図にかいて、種類ごとに数えれば防げます。
確かめ
5 人ずつのときは、17 脚に 85 人、1 脚に 3 人で、合わせて 88 人です。長いすは 17+1+2=20 脚です。4 人ずつのときは 20 脚に 80 人が座れて、8 人が座れません。どちらも文章に合っています。
判断 3:変わらない量に目をつける
入試の基礎の回で、袋の玉を移す問題をやりました。玉を移しても、玉の合計は変わりません。このような「変わらない量」に目をつけると、式が作りやすくなります。ここでは、食塩水を混ぜる場面で使います。
「〜% の食塩水」の意味
「10 % の食塩水」とは、食塩水の重さのうち 10 % が食塩、ということです。小学校で習った割合で考えます。
【決まり】食塩の重さ=食塩水の重さ×割合
10 % は 0.1、6 % は 0.06
% はたしてよい?
10 % の食塩水 100 g と、20 % の食塩水 100 g を混ぜると、何 % になるでしょうか。10+20 で 30 % と思った人もいるかもしれません。混ぜるのだからたせばいい、という発想は自然です。
食塩の重さで確かめてみましょう。
- 10 % の方の食塩:100×0.1=10 g
- 20 % の方の食塩:100×0.2=20 g
- 混ぜたあと:食塩は 10+20=30 g、食塩水は 100+100=200 g
- 30÷200=0.15 なので、15 %
30 % にはなりません。
【注意】% どうしはたさない
たしてよいのは、食塩の重さと食塩水の重さ
混ぜる前と後で変わらない量
この例で分かるように、混ぜる前と後で変わらない量のうち、ここで式に使うのは次の 2 つです。
- 食塩の重さ
- 食塩水の重さ
【決まり】前と後で増えも減りもしない量を探し、2 通りに表して等しいとおく
では、使える変わらない量が 2 つあるとき、どちらを使って方程式にすればいいのでしょうか。問 3 で考えてみてください。
問3:2 つの食塩水を混ぜる
問3
6 % の食塩水と 11 % の食塩水を混ぜて、
8 % の食塩水を 500 g 作る。
それぞれ何 g 混ぜればよいか。
どちらかの食塩水を x g として、もう一方を x で表してみましょう。そのうえで、食塩の重さと食塩水の重さのどちらを使えば方程式になるかを考えて、式を作ってみてください。
もう一方の量を x で表す
6 % の食塩水を x g とします。合わせて 500 g なので、11 % の方は (500−x) g です。
どちらの「変わらない量」を使うか
変わらない量の 1 つ、食塩水の重さは、じつはもう使っています。混ぜる前の合計が 500 g になるように、500−x と表したからです。
もし食塩水の重さで等しいとおくと、x+(500−x)=500 となり、x が消えてしまいます。これでは何も分かりません。
だから、方程式には、もう 1 つの変わらない量である食塩の重さを使います。混ぜても、食塩は増えも減りもしません。ことばの式にすると、こうなります。
6 % の方の食塩+11 % の方の食塩=できた食塩水の食塩
食塩の重さを式で表す
食塩の重さ=食塩水の重さ×割合 なので、
- 6 % の方:0.06x g
- 11 % の方:0.11(500−x) g
- できた食塩水:0.08×500=40 g
式を作って解く
方程式は次のとおりです。
0.06x+0.11(500−x)=0.08×500
小数第 2 位まであるので、両辺を 100 倍します。0.11(500−x) を 100 倍すると 11(500−x) です。かっこの中には 100 をかけません。
6x+11(500−x)=4000
かっこをはずすと 6x+5500−11x=4000 です。−5x=−1500 なので、x=300 になります。11 % の方は 500−300=200 g です。
答え 6 % の食塩水 300 g、11 % の食塩水 200 g
6 % の方を x g → 11 % の方は (500−x) g
食塩水の重さは、ここでもう使った
x+(500−x)=500 では x が消える
→ 方程式には食塩の重さを使う
0.06x+0.11(500−x)=0.08×500
6x+11(500−x)=4000
6x+5500−11x=4000
−5x=−1500
x=300
【注意】6 % と 11 % を混ぜても 17 % にはならない
6x や 11(500−x) は、食塩の重さを 100 倍したもの
確かめ
食塩 300×0.06=18 g、200×0.11=22 g
18+22=40 g、500×0.08=40 g
【決まり】水を蒸発させると、減るのは水だけ
食塩の重さは変わらない
気をつけたいこと
- 6 % と 11 % をたして 17 % のように考えた人へ:さっきの 10 % と 20 % の例を思い出してください。% どうしはたせません。たしてよいのは食塩の重さです。
- 100 倍した式で解いた人へ:6x や 11(500−x) は、食塩の重さ 0.06x g と 0.11(500−x) g を 100 倍したものです。% をたしたのとは違うので、この式で解いた人は安心してください。
- x=300 だけで終えた人へ:問題は「それぞれ」何 g かを聞いています。11 % の方の 200 g も答えましょう。
確かめ
食塩は 300×0.06=18 g と、200×0.11=22 g で、合わせて 40 g です。500 g の 8 % も 500×0.08=40 g です。ぴったり合っています。
水を蒸発させる場面でも使える
この考えは、混ぜる場面だけのものではありません。食塩水から水を蒸発させる場面でも使えます。
蒸発して減るのは水だけです。だから、食塩水の重さは減っても、食塩の重さは変わりません。
【決まり】水を蒸発させると、減るのは水だけ
食塩の重さは変わらない
蒸発させる前と後で食塩の重さを 2 通りに表し、等しいとおけば方程式になります。
まとめ:初めての文章題で考える 3 つのこと
初めて見る文章題で式が作れないときは、計算の前に、次の 3 つを考えてみてください。
【決まり】初めての文章題では
① x の候補を 2 つ考えて、間違えにくい方を選ぶ
② こみ入った場面は図にして、1 種類ずつ数える
③ 変わらない量を見つけて、2 通りに表す
- ① は、どちらの置き方でも解けます。
- ③ では、混ぜるときも蒸発させるときも、食塩の重さは変わりません。
そして最後に、次の 2 つをします。
- 聞かれた物で答えているかを見る
- 答えを代入し、文章に戻して確かめる
「x は何にするか、図にするか、何が変わらないか」。この 3 つを自分に問いかけられれば、この回の目標は達成です。
この回は、一次方程式のシリーズ(基礎・入試基礎・入試応用)の「入試応用」の回でした。ページの下から、問 1〜問 3 を解くプリントと宿題、宿題を画面で解ける練習問題のページ、宿題の解説動画へ行けます。基礎があやしいと思ったら、前の回から見直してみてください。
よくある質問
Q. x にする量は、聞かれている物にしないといけませんか?
A. いいえ、聞かれている物でなくてもかまいません。問 1 のように、道のりを x にしても、時間を t にしても、どちらも正しく解けます。迷ったら聞かれた物を x にしましょう。式が分数だらけになりそうなら、時間などほかの量を x にすることも考えます。ただし、聞かれた物以外を x にしたときは、最後に聞かれた物に直すのを忘れないでください。
Q. 食塩水を混ぜたとき、% をたしてはいけないのはなぜですか?
A. % は「食塩水の重さのうち、食塩がどれだけか」という割合だからです。10 % の食塩水 100 g と 20 % の食塩水 100 g を混ぜると、食塩は 30 g、食塩水は 200 g になります。30÷200=0.15 なので 15 % で、30 % にはなりません。たしてよいのは、食塩の重さと食塩水の重さです。
Q. 食塩の重さと食塩水の重さ、どちらを使って方程式を作ればいいですか?
A. 問 3 では、もう一方を (500−x) g と表した時点で、食塩水の重さはもう使っています。食塩水の重さで等しいとおくと x が消えてしまうので、方程式には食塩の重さを使います。水を蒸発させる場面でも、変わらないのは食塩の重さです。
解答・解説つきの演習プリント(別ページ)




